九谷焼における余白の美

九谷屋のブログへようこそ。
弊社は大正12年の創業以来、九谷焼をはじめ工芸品を専門に取り扱っている企業です。
当ブログでは焼物の魅力や、有用な情報をわかりやすく、お客様へと発信させていただきます。

 

 

 

今回のテーマは「九谷焼における余白の美」です。
とりわけ素焼き骨壺のフォルムがもつ間と静けさに焦点を当て、九谷焼らしい余白の生かし方をお話しします。

 

■余白は「何もない」ではなく、「何かが息づく:場所

余白は、装飾を減らすための消極的な選択ではありません。
光が差し、影が移ろい、手触りが語り出すための、意図された空間です。九谷焼の素地は、筆致や金彩が主役になることがありますが、同じだけ“描かない”面も作品を支えています。余白があるからこそ、描かれた一点が深く響く――それが九谷焼の品格だといえます。

■素焼き骨壺のフォルムに宿る、静かな緊張

釉薬をかけない素焼きは、土の肌理(きめ)とやわらかな反射が生む“静音”の佇まいが魅力です。
骨壺では、胴のふくらみ、肩の張り、口縁のわずかな反り、高台の丈――この“数ミリの差”が、全体の均衡と余白の質を決めます。装飾を加えないぶん、曲線の連続がそのまま表情となり、見る高さや距離によって陰影が変わります。そこに呼吸する余白が生まれ、手を合わせる人の心拍に寄り添うのです。

■描かないから見えてくる、“素材の声”

素焼きの無地は、光を飲み込み、やわらかく返します。
表面の微細な凹凸に光が離合集散し、同じ無地でも朝・昼・夕でまるで違う表情に。これが余白の力です。文様で語らない分、素材の声――土の温度、窯の痕跡、指のあと――が立ち上がってきます。九谷焼の素地がもつ粘りと張りは、簡素な形でも“品”を損なわず、むしろ沈黙の中で気配を濃くしていきます。

■“描かないことの技術”:省略・抑制・一点主義

余白の美は、何を描かないかの判断から始まります。
・全周装飾ではなく、一点だけ筆を入れる。
・色数を増やさず、濃淡だけで空間を作る。
・線を太くするのではなく、沈黙の幅を太くする。
この三つの抑制が、素焼き骨壺のフォルムに品を与え、見る人の想像力を広げます。省略は“手抜き”ではなく、もっとも難しい“選択”です。

■置き場所もデザインのうち:余白を活かす安置

余白は器の外側にも生まれます。
仏間やリビングでの手元供養では、背後の壁を淡色に整え、直射日光を避けた位置に。左右には余白を掌一枚分ほど空け、前には香立てや小花を低く小さく添えると、骨壺の輪郭が際立ちます。覆い袋やカバーを用いる場合は、光沢の強い素材より、織りのある素朴な布が素焼きに呼応し、静かな調和を生みます。

■九谷焼の余白と、祈りの距離

余白は、祈りとの距離を保つための“クッション”でもあります。
語りすぎない形と言葉少なな面が、喪の時間に余白を開け、思い出に耳を澄ます余裕を生みます。九谷焼の素焼き骨壺が多くのご家庭で長く選ばれるのは、装飾の華やかさではなく、この静けさの質によるところが大きいのではないでしょうか。

今回は、九谷焼における“余白”の美と、素焼き骨壺のフォルムが生む静けさについてお伝えいたしました。
次回は、余白と相補し合う「九谷五彩の配色バランス」を、最小限の色で最大の効果を引き出す視点から、ご紹介いたします。

お読みいただきありがとうございました。

九谷屋では、北陸地方を代表する伝統工芸である九谷焼の素焼き骨壺をご提供しております。
宮内庁にも携わった作家の形づくる、良質で安価な一品をぜひ一度ご覧になっていただければ幸いです。

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